【虐待,遺棄致死】東京都大田区 交際男性に会うため3歳長女を自宅に放置し長期旅行,餓死させる 24歳母親逮捕
【判決】「虐待経験が影響」3歳児放置死の母に懲役8年判決
【控訴審】1週間旅行で3歳長女放置死の母、2審も懲役8年判決 東京高裁

司法解剖の結果、死因は高度脱水症状と飢餓。容疑を認めており、日常的に育児を放棄し、虐待した疑いもあるとみて調べる。

梯容疑者は「死ぬとは思っていなかった。留守にしても大丈夫だと思った」という趣旨の供述をしている。
　死亡したのは長女の稀華ちゃん。2人暮らしで、梯容疑者は6月上旬の8日間、自宅に稀華ちゃんを残したまま鹿児島県に住む交際男性に会いに行った。

母親の元居酒屋店員、沙希容疑者（２４）が、稀華ちゃんを自宅に置き去りにして長期間の旅行をした理由について「子育てに疲れ、リラックスしたかった」と供述していたことが捜査関係者への取材で分かった。

沙希容疑者は昨年３月に稀華ちゃんを保育園に通わせるのをやめ、出勤中は自宅に１人で放置していたとみられる。３歳児健診も未受診で、今年５月上旬以降は外出させた形跡がなかった。
　事件は６月１３日午後３時５５分ごろ、沙希容疑者の１１９番通報で発覚。稀華ちゃんは居間のマットレスの上に心肺停止状態で横たわっており、搬送後に死亡が確認された。沙希容疑者が旅行で外出していた６月５日から同１３日までの間、自宅マンションの居間に一人きりで放置されていたとみられる。遺体の胃の中には食べ物が残っておらず、激しい脱水症状を起こしていた。

帰宅すると稀華ちゃんが倒れていましたが、約50分間、警察や消防に通報せず、その間に離婚した元夫に電話をしていたことが捜査関係者への取材で分かりました。元夫から促されて119番通報したということです。梯容疑者は電話をする前に稀華ちゃんの汚れたおむつを替えるなどしていて、育児放棄を隠そうとしたとみられています。

調べには「早く帰るつもりだったが飛行機が満席だった」などと説明したという。しかし、同課が調べたところ、飛行機には空席があったことが確認された。
　梯容疑者は逮捕前の任意の調べに対し、稀華ちゃんが亡くなる直前まで自宅で世話をしていたと説明し、鹿児島訪問の事実を伏せていた。同課は、育児放棄の実態を隠すため、虚偽の説明を繰り返したとみている。

梯容疑者が６月１３日まで８日間過ごした鹿児島県の交際男性の元から帰宅すると、稀華ちゃんはごみが散乱する６畳居間のマットレスの上で亡くなっていた。
　梯容疑者は「お茶やお菓子を置き、豆電球とエアコンをつけておいた」と供述しているが、死因は飢餓と脱水。捜査関係者は「泣いて疲れて、眠って…。それを繰り返し、衰弱していったんだろう」と唇をかむ。

　部屋の間仕切りは外側からソファでふさがれ、ベランダ側の窓は施錠されていた。

昨年春ごろ、稀華ちゃんを保育園に通わすのをやめ、同じころ、ＪＲ品川駅近くの居酒屋で働き始めた。
　勤務中、稀華ちゃんを部屋に１人で残し、仕事後にパチンコに興じて帰宅が深夜の日もあった。勤務先には「他の人が面倒を見ている」と伝えていたという。

　梯容疑者も小学生の時、実母と養父から身体的虐待や育児放棄を受けて保護され、１８歳まで宮崎県内の児童養護施設で過ごした。捜査関係者は「自らも虐待を受けて育ったことで、育児放棄に抵抗感が少なかったのかもしれない」と話す。
　３歳児健診を受けさせておらず、児童相談所も育児放棄を把握していなかった。防ぐことができなかった虐待の連鎖。

梯容疑者の母親は２００３年９月、傷害と保護責任者遺棄の疑いで宮崎県警に逮捕された。同県都城市の自宅で、当時８歳の小学２年生だった梯容疑者を殴り、ひもで縛るなどしてけがを負わせたとされる。梯容疑者は衰弱しているのに放置されたという。
　この事件後、梯容疑者は宮崎県内の児童養護施設で暮らし、高校卒業後に上京した。

自宅に長女＝当時（３）＝を置き去りにして死亡させたなどとして、保護責任者遺棄致死などの罪に問われた母親、梯（かけはし）沙希被告（２６）の裁判員裁判の判決公判が９日、東京地裁で開かれた。平出喜一裁判長は、過去に母親から受けた虐待などにより形成された被告の性格が「犯行に複雑な影響を及ぼした」とした上で、「悪質かつ身勝手」として懲役８年（求刑同１１年）を言い渡した。
判決によると、被告は令和２年６月５日ごろ、長女の稀華（のあ）ちゃんを東京都大田区の自宅に置いたまま鹿児島県内の交際相手に会いに出かけ、同１２～１３日に脱水症状や飢餓で死亡させた。
公判では、被告が小学校低学年のとき、母親から受けた壮絶な虐待の詳細が明かされた。
些細（ささい）な理由で殴られ、手足をテープで縛られ食事を与えてもらえない。包丁で身体を切られたり口を縫い付けられたり、ゴミ袋に入れられて風呂場に放置され、風呂の水を飲んで空腹をしのいだこともあった。
母親は傷害容疑などで逮捕され、被告は養護施設に預けられた。今回の事件後、被告と面談した臨床心理士は法廷で「成長過程で愛情に飢えた状況に陥った。施設入所後も、虐待による心的外傷後ストレス障害（ＰＴＳＤ）の適切な治療がなされなかった」と証言した。
その後、稀華ちゃんを出産した被告は、夫の家庭内暴力などが理由で離婚。当初は児童手当を受給し、働きながら保育園に通わせていたが、平成３１年１月には金銭苦から通園させなくなり、稀華ちゃんを自宅に残し外出することが増えた。
令和２年５月、職場で知り合った交際相手が鹿児島に転居すると、交際相手の先輩に誘われ、稀華ちゃんを置いて３泊４日で鹿児島に旅行。翌６月、再びこの先輩の誘いで鹿児島へ。窓の錠をテープで固定するなど、稀華ちゃんを外に出られない状態にして１週間以上留守にし、死亡させた。
「嫌だったが、誘いを断れなかった」「（拒否する）言葉が出なかった」。法廷でこう話した被告。最終意見陳述では「（稀華ちゃんに）ごめんねという思い。後悔しかない」と、涙ながらに語った。
この日の判決で平出裁判長は、被告には過去の虐待などから「人を信頼できず相手に本心を伝えることができない、相手の要求に過剰に応えようとする」性格傾向があり、これが事件に影響したと指摘。その上で「量刑を考える上で一定程度考慮されるべきだが、限りがある」と結論づけた。

交際相手に会うために鹿児島県へ旅行し、３歳の長女を東京都大田区の自宅に約１週間置き去りにして衰弱死させたとして、保護責任者遺棄致死などの罪に問われた母親、梯沙希被告（２７）の控訴審判決で、東京高裁は２４日、懲役８年とした１審東京地裁の裁判員裁判判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。
弁護側は１審判決について「被告が幼少期に実母から受けた虐待の影響を過小評価した」として懲役５年が相当と主張。島田一裁判長は「成育歴は考慮されるべきだが、程度には限りがある」とし、被告が過去にも置き去りを繰り返しており非難は免れないと指摘。１審判決の量刑は妥当と結論づけた。
判決によると、令和２年６月５日ごろ、自宅で長女の稀華ちゃんがいた部屋の扉をソファで固定し、玄関の鍵をかけて鹿児島県へ旅行。必要な飲食をさせず、同１２日から１３日の間、高度脱水症と飢餓で死亡させた。前月に鹿児島を訪れた際も同様の方法で数日置き去りにした。