“いつ”、本気で子供と向き合うのか

執筆|トキワ精神保健事務所

『「子供を殺してください」という親たち』(第3巻)では、ストーカーになった息子について、「子供は何の問題もなく育った」と親が語ります。そんな親に、押川はクエスチョンを放ちます。

(「子供を殺してください」という親たち (BUNCH COMICS)コミックス第2巻より)

子供が大病を患ったり、事件・事故に巻き込まれたりといった大きなトラブルはなくとも、子育てをしていれば、何かしらの問題は生じるものです。一見すると平穏、順調に見えても、親として「何かおかしいぞ」とカンが働くこともあるでしょう。

子供に起きた出来事に対して、親が即座に首を突っ込めばいいということではありません。「しばらく様子をみよう」「本人が行動を起こすまで見守ってみよう」という対応も、選択肢の一つです。そのうちに、落ち込んでいたが元気になった、不登校気味だったがまた学校に行くようになった、など、波風がおさまることもあるかと思います。

とはいえ、親が「何かおかしいぞ」と感じた感覚は、大切にしてほしいと思います。できれば子供に「あのときのあの異変は何だったのか」と、面と向かって聞いてみることです。子供が正直に応えるとは限りませんし、聞いても理解できないこともあるかもしれません。

それでも、親として気になったことを、正面切って本人に伝えることは、「あなたのこと、ちゃんと見ているからね」というメッセージになります。

弊社には、病識のない精神疾患患者をもつ家族からの相談が多くありますが、ほとんどの家族が、早い段階で本人の変調(幻覚や妄想、強迫性の症状など)に気づき、心の病気を疑っています。本人の言動に困惑し、「このままではいけない」「何とかしなければ」と考えてもいます。

それでいて、なんら対応もとらず、何十年とその状態を放置している家族が少なくないことも事実です。「本人に病識がなく、受診を勧めても拒まれる」という現実もありますが、それ以前の問題として、親子で本音を言い合える関係性が築けていなかった、ということも大きいと感じます。

そのような家族がよく口にするのは、「かわいそうだと思った」という言葉です。「無理に病院に連れて行くのはかわいそう」「精神疾患の診断名がつくのはかわいそう」……。せっかく医療や福祉につないだのに、「本人が嫌がるから」という理由で、家族もまた第三者との関わりを絶ってしまった例もありました。

当然ですが、放置した年月が長くなればなるほど、快復や自立への道は険しくなります。第三者の介入を得ることも、難しくなります。

子供を産んだ以上は、どこかで必ず、本気で向き合わなければならない瞬間がやってきます。“そのとき”に本気の対応をとるのか。いろいろな理由をつけて“後回し”にしてしまうのか。どちらがいいのかは、言うまでもないことかと思います。