お金と家族の問題

執筆|トキワ精神保健事務所

「子供を殺してください」という親たち (BUNCH COMICS)第3巻より)

コミックス第3巻に登場する「清さん」は、薬物を乱用したあげく、家族に対して莫大な金銭の無心をしていました。「お金と家族の問題」は、この仕事をする中で、弊社が考え続けているテーマでもあります。

若い世代の方々にはピンと来ないかもしれませんが、「清さん」が青春時代を過ごしたのはちょうどバブルの頃で、驚くほど世の中にお金がまわっていました。清さんの親も、高度経済成長の波に乗り、事業を成功させ、豊かな暮らしを享受していました。そして、子育てに手が回らない後ろめたさから、愛情の代わりに「欲しがる物は何でも与える」という育て方をしました。

いわゆる「中流」と呼ばれる家庭でも、それなりにお金が余っていた時代です。清さんのような家庭は、めずらしくありませんでした。そうして育てられた子供たちが今、50~60代となり、まさに、清さんのようなモンスターに仕上がっています。ところが親はすでに高齢となり、財源も枯渇……、そのツケを負わされるのは、他の子供たち(本人のきょうだい)です。

弊社にはそういったきょうだいからの相談が絶えません。実家に財源はすでになく、きょうだいは、身銭を切ってあちこちに相談しながら、本人の尻ぬぐいをしてまわっています。【お金に依存した子育てをすると、最後はもっと大きなお金がなければ問題解決ができなくなる】のです。

今は、バブル期のような好景気ではありません。しかし家族からの相談を受けていると、お金に依存した子育ては、景気や家庭の経済状況に関係なく起こりうることだと感じます。子供の学校、習い事、着る物や身につける物……、両親の稼ぎに対して子供にかけるお金の比重が大きくなりすぎ、それによって親自身が追いつめられているようなケースは、多々見受けられます。

「子供のため」と言えば聞こえはよいですが、親の虚栄心が見え隠れすることもしばしばです。

お金をかけて子育てをすれば、対外的には、親も子も「きちんとしている」と見てもらえます。だからといって、「それさえしておけばよい」というものではないことは、言うまでもありません。やがて親子のコミュニケーションが「金銭のやりとりのみ」になってしまったとき、それは家族の問題の最終形と言えます。

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